この点について、最高裁判所は「義務教育の無償とは、授業料をとらないという意味」と判断した判例があります(義務教育教科書費国庫負担請求事件)。, これを受けて、教育基本法第5条でも義務教育について授業料を徴収しない旨を定めています。, (第4項)国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。, 逆にいえば、授業料に含まれない教科書代金や給食代その他の費用は有償であっても憲法違反ではないということです。, ただし、この裁判が問題となった後、国は教科書代を無料とする法律(義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律)を立法するに至っています。, 2020年4月1日以降、これまでの義務教育の無償化をさらに進めて、高等教育の無償化が進んでいます。, の授業料や入学金を減免するほか、返済の必要がない奨学金(給付型奨学金)を支給することを指します。, 住民税が非課税となるのは、子供2人の場合は年収270万円程度の場合に限られますので、世帯年収が低く子供に十分な高等教育を受けさせることが難しい家庭を支援するための法律と言えます。, なお、住民税非課税世帯に準ずる世帯(住民税は非課税とならないけれど、これに近い年収状況の家庭)の場合は、区分に応じて授業料減免と給付型奨学金を「全額の3分の2、全額の3分の1」といったかたちで支援することになっています。, 例えば、子供2人の家庭で年収が300万円までであれば3分の2の助成が受けられ、年収380万円までであれば、3分の1の助成が受けられるということです。, また、家庭資産の基準として生徒と生計維持者(2人)の資産総額(不動産は含まない)が2000万円以下であること(生計維持者が1人の場合は1250万円未満)であったり、学力の基準として, 高等教育の無償化は、憲法が定めている教育を受ける権利の範囲を、さらに一歩広げるものと言われています。, 以下のサイトを使えばシミュレーションをすることもできるので対象になるかもしれないと思った方はこちらをご確認ください。, 教育を受ける権利をめぐっては、「外国人に教育を受ける権利は保障されているのか?」ということも問題となります。, この点については、我が国の政府も批准している「児童の権利に関する条約第28条」において、条約批准国に「初等教育を義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとする」ことを求めています。, また、こちらも我が国政府が批准している「国際人権規約」の社会権規約13条においても初等教育の義務化・無償化が求められています。, 最高裁の判断としては、在留外国人の人権の範囲が争点となった昭和53年の「マクリーン事件判決」が参考になります。, この判決において、最高裁判所は「基本的人権の保障は権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、我が国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべき」としています。, その一方で、「外国人に対する憲法の基本的人権の保障は外国人在留制度の枠内で与えられているに過ぎない。」とし、日本国民と同程度の権利が認められるわけではないという立場をとっています。, 子供に教育を授ける立場の人は親と教師が考えられますが、こうした人たちが「子供にどのような教育を受けさせるか」を自主的に決めることができるかどうかは重要なテーマです。, これを教育権の問題と呼びます。 教育を受ける権利とは、「国民が国家に対して教育に関する制度を整えるよう要求する権利」のことをいいます。, 日本国憲法では第26条で保障されている権利です。 そうならないために国民は国家に対して「最低限これだけの教育環境を整えてください」と要求することができるのです。, 憲法は本来国家が国民の生活に立ち入らないことを約束させるためのものですが、社会権が問題になる状況においては、国家による国民への介入を求める根拠となる場合があります。, 憲法が保障している教育を受ける権利の内容を、さらに具体的に読み解いていくと、以下のような権利が認められるかどうかが問題となっています。, ではまず憲法第26条第2項について更に見ていきましょう。 [大卒程度] 警察官・消防官 ストロングテキスト〈数的推理〉【動画】, 数的推理入門テキスト【動画】, 判断推理入門テキスト【動画】. © Exia Publishing Co.,Ltd. 38.委員会は、多数の締約国報告書を審査してきた経験に照らし、教育への権利は職員および生徒の学問の自由がともなわなければ享受できないという見解をとるに至った。 学問の自由および機関の自治 . 学問の自由は研究・講義などの学問的活動において外部からの介入や干渉を受けない自由のことで、学問に関係するすべての人が対象です。 それに対し、教育を受ける権利は学習者(教育を受ける立場になり得る者)に対してだけ限定して保障されます。 明治大学は、封建的な社会から近代社会へと変容する時代に、個人の権利を確立し、自由な社会を実現するために、フランス法学を教授する明治法律学校として、1881(明治14)年に創立されました。 教育権が問題となった裁判例としては、旭川学力テスト事件があります。, これは国が実施している全国学力テストを、学校側が拒否できるかどうかが問題となった裁判です。, 子供に教育をする教育権は「国」にあるのか、「教師」にあるのか、また子供を主体として考えたときに全国学力テストは適切なものなのか、という学習権と教育権の所在が争われました。, 結論としては「教師には教育の内容を決める自由が認められるものの、その範囲は合理的な範囲で制限される」と判断し、学力テストの実施を認めました。, その一方で、「国家は学校の教科科目や授業時間など、教育内容の大枠を定めることができるが、過度の介入はすべきではない」と折衷的な判断をしたことも注目されます。, この裁判が終わった後、学力テストはしばらく中止されていましたが、2007年からは全国学力・学習状況調査が再度実施されるようになりました。, 新しい学力テストにおいては、教育活動の結果を検証する具体的な方策担っている一方でテストの結果によって校長や教職員、学校の予算に反映する仕組みを検討する自治体(大阪市など)が出たことから、過度の競争が生まれることを懸念する意見もあります。, 現在高等教育の無償化が進んでいますが、これは日本国憲法で保障されている国民の権利を、具体的にどう実現していくのかが直接的に問われているといえます。. 教育を受ける権利と教育権の所在: 概要 26条1項は、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」と規定し、続く2項では、子どもの教育を受ける権利(学習権)に対応するよう、子女に普通教育を受けさせる義務を親権者等に課している。 1、すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。2、すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。 義務教育は、これを無償とする。 まずは条文の内容を確認しておきましょう。日本国憲法第26条では、以下のように規定されています。 第1項では教育を受ける権利の原則的内容、「年齢や能力に対して相応しい教育を差別なく受けられるということ」について述べるとともに、第2項でそれを実現するための親の義務や、義務教育の無償について規定しています。 このような内容を持つ教育を受ける権利は、国民が国家に対して「実質的な平等」を求める権利… 本記事がお役に立てば幸いです。, まずは条文の内容を確認しておきましょう。日本国憲法第26条では、以下のように規定されています。, (第1項)すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。, (第2項)すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。, 第1項では教育を受ける権利の原則的内容、「年齢や能力に対して相応しい教育を差別なく受けられるということ」について述べるとともに、第2項でそれを実現するための”親の義務や、義務教育の無償”について規定しています。, このような内容を持つ教育を受ける権利は、国民が国家に対して「実質的な平等」を求める権利(これを社会権といいます)の一種に分類されます。. を保障しています。 今回はその中で教育を受ける権利について. 学問の自由は、これを保障する。 第二十六条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。 2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。 学説・判例 新型肺炎感染対策で経済活動がしぼみ大学生の家計悪化が続いて、休学や退学が増加する傾向にあるというニュース。631の大学が朝日新聞と河合塾の共同調査に応じ、新… このページでは、行政書士で重要な判例「最大判昭51.5.21:旭川学力テスト事件」について解説します。論点である「普通教育における教師に対し、教授の自由は認められるか?」「国は、教育内容について、決定する権能を有するか?」といった部分は重要なので、しっかり整理しましょう! この時の「自由」は学生側に一方的にあるのではなく、学生を受け入れる側にもあるからこそ「社会的な自由」が保障されます。. ここから、教育を受ける権利の請求権としての側面が導かれる。 教育の自由 . 教育を受ける権利は、国家に教育制度の整備を求める権利という意味を持ちます。また国家による自由のため、社会権に分類されます。今回はこの教育を受ける権利を解説します。ごり丸具体的にどんな意味があるの?ごり子この権利が保障されているから、義務教育 自由権との違いです。 (自由権的側面のある社会権もあります) 日本国憲法は社会権として、 生存権、教育を受ける権利、勤労の権利、労働基本権. [大卒程度] 警察官・消防官 ストロングテキスト〈判断推理・空間把握〉【動画】, ゼロから特訓! 自由競争化 の問題 教育の有償 の問題 国民に「教育を受ける権利」があるといっても、教 育に高い費用がかかるようであっては、十分に教育を 受けることはできない。この点で、憲法が義務教育を 無償としている点は重要である。 Copyright © 2021 政治ドットコム All Rights Reserved. 教育を受ける権利は、国民が国に対して要求できる基本的人権の1つとされ、社会権に属している。 日本においては、日本国憲法第26条第1項に「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。 」という規定がある。 All Rights Reserved. 概要. 第3条 (教育の機会均等) すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであって、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上 … 本問は、学問の自由と教育を受ける権利に関する基本的な知識を問う問題です。学問の自由は、判例の数が少 ないので、教育を受ける権利と合せて1問を作ってくるケースがほとんどです。ですから、勉強する際にもこの 2つを一緒に勉強すると効率的です。 教育を受ける義務・権利は「小中学校の9年間」だけであり、それ以降は能力に応じて「自由に高校で教育を受け」、学力に応じて「自由に大学で学問する」事が保障されています。. 教育を受ける権利は教育の自由を保障するものかどうかが問題になる。 親権者は、子どもに普通教育を受けさせる義務を第一義的に負う者である(26条2項)。 社会権とは?4つの権利を判例・学説と共に簡単解説社会権とは、私たちが人間らしい生活を送るために必要な様々な権利のことを指します。 続いて教育を受ける権利について説明します。 憲法26条1項では教育を受ける権利を規定しています。 教育を受ける権利とは、国民が国等によって教育を受ける権利を侵害されず(自由権的側面)、国家に対して教育制度と施設を整え、適切な教育の場を要求(社会的側面)する権利です。 お探しのページは削除されたか、名前が変更されたか、一時的に利用できない可能性があります。, ゼロから特訓! 2項では、義務教育の無償について規定しています。, 例えば、教科書や給食代は無料なのか、社会科見学や修学旅行にかかる費用はどうなるのか…など、その人の考え方によって「義務教育」の範囲は広くなったり狭くなったりする可能性があるからです。, ではまず先ほど例に出た教科書代についてです。 このページでは、行政書士で重要な「教育を受ける権利(憲法26条)」を解説します。この点は「国家の教育権と国民の教育権」の違いをしっかり理解すること。また、「旭川学力テスト事件と教科書費国庫負担請求事件」といった判例が重要なので、その点も解説しました! 3.教育を受ける権利と憲法26条 先に見たように日本国憲法26条は、教育を受ける権利と教育の義務について定めています。高乗智之は『憲法と教育権の法理』(成文堂, 2009)の中で、この「教育を受ける権利」について3つの捉え方を示しています。 職業選択の自由(22条1項) 学問の自由(23条) 生存権(25条1項) 教育を受ける権利(26条1項) 勤労権(27条1項) 労働基本権(28条) 弁護人依頼権(34条) 拷問・残虐な刑罰の禁止(36条) 公平・迅速な裁判を受ける自由等(37条) 学習権:教育を受ける権利を「子供を主体として考えた場合」に、どのような権利内容が認められるか, 教育権:教育を受ける権利を「教育を授ける側の人(親や教師)から考えた場合」に、どのような権利内容が認められるか, また、家庭資産の基準として生徒と生計維持者(2人)の資産総額(不動産は含まない)が2000万円以下であること(生計維持者が1人の場合は1250万円未満), 将来社会で自立し、活躍する目標を持って進学しようとする大学における学習意欲を有すること. 教育を受ける権利と教育の自由や労働基本権と団結の自由など自由権的側面の問題が認識されるようになり、時代の要請から強く主張される新しい人権(学習権、環境権等)も自由権と社会権の双方にまたがった特色を持っていることが背景にある 。 などを取り上げながら、具体的に社会権とはどのようなものなのか、わかりやすくご紹介いたします。 しかしこれだけでは具体的に何を保証する権利なのかイメージしづらいでしょう。, そこで今回は「教育を受ける権利」についてより詳しく解説していきます。 そこで、今回は 社会権とは、人間らしい生... 子供の教育環境を整えるためには多額の金銭が必要になるため、潤沢な教育予算のない家庭と経済的に余裕のある家庭とでは、子供が受けられる教育に大きな差があります。, これを国家がそのままにした場合、教育環境の格差はどんどん広がっていきます。 1、社会権とは 日本国憲法に規定する教育を受ける権利又は学問 の自由に関する記述として妥当なのはどれか。 1.教育を受ける権利を実質化するための義務教育 の無償について、その範囲には授業料を徴収しない ことだけでなく教科書の無償配布も含まれる。 しかしこれだけでは、大まかすぎて社会権に対して具体的にイメージすることができませんよね。 「教育を受ける権利は憲法で保障されている」と言われれば、「そうだよね」とうなずく人は多いのではないでしょうか。現代社会では、ある意味当然のように受け取られている概念かもしれません。しかし、この権利について具体的に説明しようとすると、難しく感じるのではないでしょうか? の教育を受ける権利の主体と考えるべきである7。教育への権利は、第1 に、功利主義的な立場からは、民主制を維持する上での「国民の権利」行 使の前提条件と考えられるものの、第2に、個人の「人格 … だから研究発表の自由も保障されるとしたんです。 【生徒】 なんだか憲法21条と似ていますね。 【弁護士】 いい点に気が付きましたね。憲法23条は、憲法19条の思想良心の自由や憲法21条の表現の自由の学問分野バージョンと考えればいいでしょう。 1.「教育を受ける権利」とは? 教育は、個人が人格を形成し、社会において有意義な生活を送るために 不可欠な前提をなす。この意味で、「教育を受ける権利」は、精神的自由権 としての側面を持つ。また、「教育を受ける権利」が保障されていることに 社会権を構成する4つの権利